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【ブログ】外国人の離職理由を疑う― 外国人専門のキャリアコンサルタントの真の役割

離職はなぜ起きるのか

外国人材の離職が多い、という話はよく聞きます。実際に、28%の外国人材が入社して1年以内に退職してしまうというデータもあります。では、なぜ彼らは職場を離れるのでしょうか。調査を見ると、「上司のマネジメントに対する不満」「業務内容のミスマッチ」「給料や労働条件への不満」「人間関係への不満」など、共通した理由が挙げられています。どれも現場感覚として理解しやすく、企業側も改善すべきポイントとして捉えやすい内容です。

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https://www.daijob.com/uploads/pdfs/a4ebf7-7d94-4f3ea.pdfDaijob.com
日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査
早期離職の原因(P10)

しかし、これらの理由を少し引いた視点で見てみると、ある共通点に気づきます。それは、会社が悪い、上司が悪い、環境が合わない。つまり、問題の所在が自分の外にある形、いわゆる「他責」として語られているのです。

他責は自然な出発点である

とはいえ、クライアントが相談に来たとき、最初から自分の内面を整理できているわけではなく、「何が問題か」を外側に求めるところから話し始めることがほとんどです。これはカウンセリングの初期段階にあたるもので、自分の思考や行動に十分に目が向いていない状態とも言えます。以下は日本キャリア開発協会(JCDA)の「自己概念」の解説です。ここでは「他人事の世界」と書かれています。

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重要なのは、この段階にとどまることではなく、そこからどのように視点を変えて「自分事」にしていくかです。対話を通して過去を振り返り、自分がどのように状況を捉え、どのように行動してきたのかを少しずつ整理していく。その過程で、これまで当たり前だと思っていた考え方や前提に揺らぎが生まれ、自分の価値観や大切にしたいことが見えてきます。そして最終的に、「本当は自分はどうしたかったのか」という問いに向き合えるようになります。

本当の理由は対話の中で見えてくる

上記のような構造を考えると、離職の本当の理由は最初から語られるわけではないことがわかってきます。初回の面談では、調査で挙げられているような理由がそのまま語られることがほとんどです。しかし、対話を重ねていく中で、少しずつ別の側面が見えてきます。たとえば、「本当は自分は働き続けたかったが、配偶者が日本での生活にストレスを感じている」「将来的に自分で事業を始めたい」「本当は自分の専門分野で専門性を高めたい」「家族のために安定した仕事に就きたい」といった理由です。

これらは最初から明確に意識されているわけではなく、振り返りを通して徐々に言語化されていきます。つまり、アンケートなどで収集される離職理由は、その時点で表現できる範囲のものであり、本質的な動機とはズレている可能性があるのです。この点を踏まえないまま企業の体制を整えるなどの対策を講じても、表面的な改善にとどまってしまう危険性があります。
もちろん、会社側の問題があることもあります。それはそれできちんと対応しなければいけないのは言うまでもありません。

「自分事」になることで意味が変わる

そして、自分の価値観や方向性が見えてきたとき、これまでの経験の意味づけが大きく変わることがあります。それまで不満だと感じていた出来事が、成長の機会として捉え直されるようになるのです。専門ではない仕事は、将来の事業のための経験だった、ミスマッチだと思っていた業務が新しい知識や視点を得る機会だったと気づいたりすることがあります。

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このように「自分事」として捉え直すことができると、同じ環境であっても選択が変わります。人は納得できない状態では働き続けることが難しい一方で、意味づけが変わることで、その環境の中で続けるという選択が可能になるからです。ここに、離職を防ぐための重要なヒントがあります。

外国人の場合、このプロセスは止まりやすい

しかし、外国人の相談者の場合、このプロセスが途中で止まってしまうことが少なくありません。その背景には、言語の壁、文化の壁、制度の壁、そして心理的な壁といった複数の要因が重なっています。自分の感じている違和感や不満を十分に言語化できなかったり、文化的な前提の違いから相手の意図を誤って解釈してしまったりすることで、問題の整理が浅い段階で止まってしまうのです。

たとえば、「上司のマネジメントに対する不満」という理由の背景には、「差別されていると感じる」という感情が隠れていることがあります。昇進できない理由や業務内容の偏りを「自分が外国人だからだ」と解釈してしまうケースです。しかし、具体的なやり取りを丁寧に確認していくと、「日本人でも同様に言われる可能性がある内容」であることも少なくありません。また、「業務内容のミスマッチ」についても、文化的な背景が十分のきょううゆされていなかったための「誤解」が原因であることもあります。つまり、それは差別ではなく、文化やコミュニケーションスタイルの違いによってそう受け取られていた可能性があるのです。

外国人専門としての実践

そこで、このような問題に対処するために、現在、私たちはキャリアコンサルタントを対象にした英語ロールプレイ会を実施しています。この場では、単に英語で面談ができるようになることを目的としているわけではありません。むしろ重視しているのは、外国人社員の前にはどのような見えない壁が存在するのか、言語や文化の違いによってどのようなすれ違いが起こるのかといったことを考え、その対処方法を模索することです

参加者同士でケースを分析し「なぜこの言葉が出てきたのか」「ここにはどんな思い込みがあるのか」「どうすればより深い対話につながるのか」といった問いを繰り返しながら、外国人支援に特有の難しさと丁寧に向き合っています。

壁を取り除くことがゴールではありません。それは出発点に過ぎず、大事なのは上記のような「自分自身に目を向ける」プロセスへと入っていくことです。

実際に、私自身も数えきれないくらいの外国人社員のリアルなキャリア相談に対応してきましたが、外国人特有の壁を一つ一つ乗り越えていって、自分自身の核になる「価値観」に気付いたところから、自律的に歩き始めたというケースをたくさん見てきました。その時の彼らは、「異文化の中で葛藤しながらも未来を切り拓こうとする挑戦者」のように頼もしく、眩しく映ります。

おわりに

外国人の離職問題は、制度や労働環境の問題として語られることが多いテーマです。しかし実際には、その奥にある「自分はどう働きたいのか」「何を大切にしたいのか」という問いに向き合えるかどうかが、大きな分岐点になっています。そして、その問いに向き合うためには、外国人の場合には特に丁寧な対話が不可欠です。
他責から自分事へ。その視点の転換を支えること。その過程で現れる外国人の壁を一つ一つ取り除いていくこと。それこそがキャリアコンサルタントの本質的な役割であり、外国人の離職を防ぐための最も重要なアプローチなのかもしれません。