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【ブログ】外国人留学生のキャリア支援は、日本語教師とキャリアセンターの連携から始まる

大学で外国人留学生のキャリア支援に取り組んでいると、キャリアセンターの方から「そもそも情報が学生に届いていない」「イベントに呼びかけても参加してくれない」といった声をよく耳にします。実際に、留学生向けのイベントを開いても参加者が10名以下という現状を繰り返し見てきました。その背景には、大学の規模が大きく、学生数も多いために一人ひとりへの丁寧な対応が難しくなっている現状があります。日本人学生のように「この日に説明会がある」と伝えれば一定数は集まる、というわけにはいかず、そもそも情報の伝達段階でつまずいているケースも少なくありません。

届かないキャリア情報

特に外国人留学生は、配布された案内メールが日本語で書かれていると、その内容の重要性が十分に伝わらず、結果として行動につながらないことも多々あります。就職支援のしくみはあっても、それが「機能していない」と感じられるのは、こうした情報の伝達や認知のギャップが要因となっている可能性があります。

キャリアセンターと学生との間には物理的な距離があり、主に紙やメールといった文字情報に頼らざるを得ない現状がありますが、その方法だけでは限界があることに、多くの関係者が気づき始めています。

その点、日本語学校や専門学校などは学生と教職員の距離が近く、支援がより手厚く行き届きやすいという特徴があります。つまり、大学においても、学生と日常的に接している「近い存在」をキャリア支援のパートナーにできないかという視点が、これからの支援体制づくりに重要なポイントになってくるかもしれません。

信頼される存在――日本語教師の強みとは

その「近い存在」とは、まさに日本語教師です。外国人留学生にとって、日本語教師は最も日常的に接する日本人であり、信頼関係を築きやすい存在です。授業には出席しても、キャリアセンターには足を運ばないという学生でも、日本語の授業中に「このイベントはあなたに必要だよ」と言われれば、行動に移すきっかけになります。

私も実際に日本語教師として大学で日本語授業を担当していますが、大学のキャリアイベントのことを知っているか聞いてみるとほとんどの学生が「知らない」と答えます。しかし、聞いてみると実際は多くの人が興味を持っているのです。ただ知らないだけだと気付きました。キャリアセンターと教師の「連携」の重要性を強く感じています。

ただし、日本語教師が必ずしもキャリア支援の専門知識を持っているわけではありません。だからこそ、キャリアセンターの職員が専門的な立場から、少しずつ日本語教師と知識を共有しながら一緒に学んでいくことが大切です。それでは、どのような形で連携が進められるでしょうか。

① 情報共有のしくみをつくる

まずは、キャリアセンターから日本語教師へ、外国人留学生向けのイベント情報や支援制度などを定期的に共有する仕組みをつくることです。教員向けのメーリングリストのような形式で概要やポスターを送信し、授業中に一言紹介できるようにしておくと協力もしやすくなります。

また、日本語教師向けに「キャリア支援ミニ通信」を発行するのもおすすめです。学生からよくある質問や、履歴書・面接で必要とされる日本語表現など、授業にも応用できる内容を含めることで、授業の際にそれを練習することなどもできます。また、これらの情報は「大学の留学生はどんな日本語を勉強するべきか」という課題について日々考え迷っている日本語教師にとっても有益な情報になります。

② 役割意識の共有を図る

次に大切なのは、日本語教師自身が「キャリア支援は自分(日本語教師)の役割の一部である」と感じられるような働きかけです。そのためには、キャリアセンター主導で日本語教師向けの勉強会や懇談会を開催し、現場の課題や成功事例を共有する機会を設けるとよいでしょう。

特に、「どんな声かけが効果的か」「日本語教師だからこそできる支援とは何か」といった現場に即した内容を扱うことで、教師の当事者意識が高まります。

③ 実践的な連携の機会をつくる

さらに、授業とキャリア支援を直接つなげる仕掛けとして、授業の中でキャリアセンター職員をゲストとして招いたり模擬面接や進路相談を授業の延長で行うといった取り組みも効果的です。

学生が普段使っている教室や授業の枠の中でキャリアの話が出てくることで、「就活は特別なことではなく、日常とつながっているものだ」という意識が育ちます。

また、日本語教師が学生の変化や悩みに気づいたときに、気軽にキャリアセンターへ連携できるような簡易的な報告フォームや連絡体制を整えることも、非常に重要です。

「日本語教師×キャリア支援」で大学全体が変わる

外国人留学生のキャリア支援において、日本語教師は「日本語を教える人」にとどまらず、学生の人生に寄り添う重要な協力者となります。キャリアセンターと連携することで、支援の幅も広がり、学生にとってもより安心できる環境が作られます。

これは、これからのグローバルな大学に求められる姿かもしれません。