専門学校選びに新しい視点を
外国人留学生が日本で専門学校を選ぶ際、多くの場合「学費」や「日本語能力」が大きな判断基準となってきました。どの学校なら経済的に通えるか、自分の日本語力で授業についていけるか。これらは確かに重要な要素です。しかし近年、もう一つ大切な視点が加わりつつあります。それが「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の認定を受けているかどうか、という点です。
「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」とは?
この制度は文部科学省が令和5年に定めたもので、特定の専門学校コースが対象になります。制度の趣旨を一言でまとめると、「専門学校卒業生が日本で就職するとき、大学卒業生と同じように、専攻と職業の関連性を柔軟に審査する」というものです。

通常、外国人留学生が日本で就職し、在留資格「技術・人文知識・国際業務」などを取得するには、大学や専門学校で学んだ専攻と就職先の職務内容に関連性が求められます。大学については比較的緩やかに判断されてきましたが、専門学校は厳格に見られる傾向がありました。つまり、せっかく専門学校を卒業しても、専攻と少しでも違う職に就こうとすると在留資格が得にくい、というハードルがあったのです。
この不均衡を是正し、専門学校の卒業生にもキャリアの可能性を広げるのが本制度です。詳細は文部科学省の公式ページ【参考:文科省サイト「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」について:文部科学省】や、行政書士の方による解説記事【参考:行政書士かつしか法務事務所ブログ専門学校(専修学校専門課程)における「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」認定とは 行政書士葛飾江戸川総合法務事務所 | ブログで紹介されている内容が弊所の取扱い業務です】で紹介されています。
制度が持つ意義
一見すると細かい制度変更に見えるかもしれません。しかし留学生にとっては大きな意味を持ちます。なぜなら、日本での就職活動は「在留資格」の取得と直結しているからです。学校で学んだ内容と就職先の職務の関係性が「緩やかに」認められることで、キャリアの選択肢が一気に広がります。
たとえば、IT関連の学科で学んだ学生が営業職や企画職に就く場合、大学なら問題なく関連性が認められることが多いですが、専門学校では「IT関連=プログラマーやエンジニア」と狭く判断されがちでした。プログラム認定コースであれば、大学と同じ基準で審査されるため、より柔軟なキャリア選択が可能になります。
制度が浸透しにくい背景
ところが、この制度は現場ではあまり知られていません。日本語学校や専門学校の職員・教員の間でも浸透していない現状があります。メディアや日本語教育関係の情報誌でも大きく取り上げられることも少なく、情報が届きにくいという問題があります。
また、留学生の進路を直接支援する職員や教員にとっても、在留資格制度は専門外です。行政書士や入管関係者と比べると情報へのアクセスが限られ、学生に伝えるべき重要な情報が現場で共有されにくいのが実情です。
外国人留学生の持つ「情報の壁」は彼らの収集能力の問題ではなく、環境の問題でもあるのです。
そこで、カギになるのは 外部の専門家 ― 省庁の職員・キャリアコンサルタント・行政書士 です。制度や在留資格、キャリア形成に精通する彼らと教育機関が連携することで、情報が正確かつ実践的に学生に届くようになります。
・教職員やキャリアセンター職員が制度を理解できるよう、研修やセミナーを実施する。(省庁)
・来日後すぐの段階から学生向けにキャリア教育を実施し(母語でもよい)、制度を伝え、自律的にキャリアを選択できるようにする。(キャリコン)
・行政書士と学校職員(または主任)が定期的に情報交換し、最新の制度情報を学生に正しく届ける仕組みをつくる。(行政書士)
この制度に限らず、在留資格や留学生向けのキャリア関連の制度の伝達を教育機関だけに任せるのは限界があります。情報が十分に浸透せず、最も必要とする留学生に届かないままになってしまうからです。だからこそ、外部との連携によって最終的な受け手である留学生に確実に情報を届ける仕組みづくりが重要です。
まとめ
「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」は、まだ広く知られていない制度ですが、認定コースを選ぶことで留学生のキャリアの可能性が大きく広がります。学費や日本語能力に加え、「認定の有無」を新たな基準として取り入れること。それを早い段階から伝え、外部専門家との協力で情報を確実に届けることが、留学生支援にとって不可欠だと考えます。