【ブログ】留学生のキャリアを考える ― 多様な背景と未来への伴走

留学生をテーマにした勉強会を終えて

先日、英語キャリアカウンセリング勉強会のテーマで「留学生」を扱いました。定期的に行っている英語キャリアカウンセリングの勉強会では、その都度クライアントの属性に合わせてテーマを設定しています。これまでにも「留学生の就職」「英語教師のキャリア」「転職」「起業」「国外からの日本就職」「帯同家族の就職支援」など、幅広い切り口で議論してきました。一見するとまったく異なる立場に見えるテーマですが、振り返ればこれらは一人の人間が人生の中でたどる可能性のある道でもあるのです。

誰もが「留学生」になる瞬間がある

例えば、転職や起業、配偶者の仕事の都合などで日本に来た人が、日本で働くために日本語を学び始め、結果的に「留学生」になるケースがあります。実は私自身もその一人でした。大学卒業後に3年間働いたのち、43歳のときにベトナムへ「プチ留学」した経験があります。留学は決して若い時期に限られるものではなく、人生のどこかでふと現れる可能性がある立場なのだと実感しています。

フェアで見えた想定外の現実

先日参加した「留学生向けの進学・就職フェア」でも、そのことを強く感じました。カウンセリングを受けに来た人の中で、25歳以上の留学生の数が、25歳以下を上回っていたのです。当初の想定とは異なり、私自身の見方にフィルターがかかっていたのかもしれません。しかし、冷静に考えれば決して珍しいことではありません。学び直しやキャリアの再構築を目的に、中堅世代が留学生となるのは自然な流れなのです。

「留学生」という枠が見えなくするもの

このような多様なケースは、「留学生のキャリア」や「日本の就職スタイル」といった一般論だけでは捉えきれません。むしろ、例外として見過ごされがちです。背景には「留学生」という言葉でひとくくりにしてしまう傾向があるのではないでしょうか。私がこれまで担当してきた日本語学校や大学の日本語クラスにも、20代から40代まで幅広い年齢層の学生がいました。新卒としては扱われず、中途採用としてはスキル不足と見なされる──そんな狭間に立たされる人も少なくありません。それでも、彼らが共通して持っているのは「自分のキャリアを発展させたい」という強い思いです。

本当に必要な支援とは何か

その思いに応えるには、単なる情報提供や言語支援では不十分です。これまで歩んできた人生のストーリーに耳を傾け、失われかけたアイデンティティ──人脈や仕事の経験など──を再びつなぎ直す勇気を与えること。そして、「無理だ」と諦めかけたときに、一緒に新しい道を探ろうと声をかけること。それこそがキャリアコンサルタントの役割であり、本当に必要とされる支援だと信じています。

教師や支援者にも伝えたい視点

この考え方は、キャリアコンサルタントだけに限りません。日頃から日本語教師や支援者として留学生と接する方にもぜひ知っていただきたいのです。目の前の学生がどのような背景を持ち、どんな思いで日本に来たのか、そして今何に困っているのか。その視点を持つことで、一人ひとりの姿がぐっと鮮明に見えてきます。「留学生」という言葉は、単なる資格や立場を指すのではなく、「人生の新たな挑戦に挑み、日本語を学ぶ覚悟を決めた勇気ある人たち」を意味しているのです。

おわりに 

もちろん、現実には難しさも多々あります。周りからも「いや、それは無理でしょう」と言われることが何度もありました。それでも私はそのたびに、「諦めたらそこで試合終了だよ」と伝えてきました。簡単に答えが出る課題ではありませんが、だからこそ共に悩み、共に考える姿勢が大切だと思います。

今回の勉強会を通して、改めて「留学生」というテーマが持つ奥深さに気づかされました。立場や年齢に関わらず、人は人生のどこかで学び直しを必要とし、留学生となる可能性があります。そのときに必要なのは、制度や情報を超えた、人としての理解と伴走ではないでしょうか。私はこれからも、留学生を「一人の挑戦者」として尊重し、共に未来を探るカウンセリングを続けていきたいと思います。