【ブログ】日本語教師、キャリコンが取っておきたいもう一つの資格「学習アドバイザー」

 

「学習アドバイジング」という言葉を聞いたことはありますか? 日本ではまだそれほど広く知られていませんが、外国人を対象とした日本語教師やキャリアコンサルタントとして活動している方にとって、「学習アドバイザー」は支援の質を高めるうえでとても有効な資格です。

「自律学習」を支えるという視点

学習アドバイジングの核にあるのは、「自律学習(Autonomous Learning)」という考え方です。これは、学習者自身が自分の目標を設定し、学習方法を選び、進捗を確認しながら自ら学びをコントロールしていくプロセスを指します。学習アドバイザーは、こうした自律学習を支援する存在であり、答えを与えるのではなく、「自分で考える力」を引き出すことに重点を置いています。

日本語教師やキャリコンとの共通点

このアプローチは、日本語教師やキャリアコンサルタントの実践とも多くの共通点があります。たとえば、日本語教育においては、学習者が「どうすればもっと効果的に日本語力を伸ばせるか」を考える力を養うことが重要です。また、キャリア支援では、「自分が何をしたいのか」「どのように進むべきか」を相談者自身が考える力を育てることが求められます。どちらも、「自律性を育てる」という点で、学習アドバイジングと深くつながっています。

外国人支援と日本語学習の支援

特に、外国人を対象にキャリア支援を行うキャリアコンサルタントにとっては、「日本語学習を後押しする」という役割も重要です。言語力は就職・定着において不可欠な要素であり、相談者のキャリア形成を支えるには、単なるアドバイスではなく、自ら学び続けられるよう支援することが求められます。だからこそ、学習アドバイジングの理論を理解し、自律学習を支えるスキルを身につけておくことは、キャリアコンサルタント自身の大きな強みになるでしょう。

理論を体験的に学ぶには

自律支援のプロセスを理解するには、まず自分自身がそのプロセスを体験してみることがとても大切です。私が受講したのは、神田外語大学が提供している「学習アドバイザー養成プログラム」。

https://kuis.kandagaigo.ac.jp/rilae/education/courses/

このプログラムでは、学習アドバイジングの基本的な理論と実践を段階的に学ぶことができます。日本語版ではコース1〜3までを修了することで資格証が発行され、アドバイジングの基本的な考え方と進め方を身につけることができます

ステップアップには英語版もおすすめ

さらに深く学びたい方や、今後アドバイザーとして指導・講師などの立場も視野に入れている方には、引き続き、英語版のコース4〜5を受けることもおすすめです。特にコース5では、教育機関にアドバイジングを導入する戦略を、マーケティング理論と照らし合わせて学ぶ内容が含まれています

英語版と日本語版、それぞれの特色

私は2021年~2022年に英語版の学習アドバイザー養成コースを受講し、2023年に日本語版がスタートしてからは、TAや講師として日本語版にも関わっています。両方のコースを体験して感じたことは、それぞれに異なる特徴があるということです。

英語版は「理論中心」=アカデミック寄り

英語版は全体的に理論重視でアカデミックな内容が中心です。参加者にも大学の英語教育関係者が多く、理論を深く掘り下げる傾向があります。各コースで短い論文の提出が必須であり、資格取得までのハードルは少し高めです。

日本語版は「実践重視」=現場寄り

一方、日本語版はより実践的な内容になっていて、日本語教師の参加が多いこともあり、日々の授業や指導の中でどうアドバイジングを活かすかに焦点が当てられています。すぐに現場に応用できる具体的なヒントが多く、実務に活かしやすい構成です。

ハイブリッド受講もおすすめ!

「英語で受けてみたいけど、全部はちょっと不安…」という方には、コース1~3を日本語で受講し、コース4~5を英語で受けるというハイブリッド受講もおすすめです。前半で基礎を日本語でしっかり学び、後半で英語版にしかないリーダーシップや戦略的導入の方法を学ぶことができます。

オンライン時代にますます求められる力

ICTの活用やオンライン授業の増加により、学習者のモチベーション維持や継続が難しくなる中、学習アドバイザーの存在はますます重要になっていくと言われています。企業にとっての経営コンサルタントのように、語学学習者にとって「学習アドバイザー」が当たり前の相談相手となる日が、そう遠くない未来に訪れるかもしれません。

おススメの本

1.基本をわかりやすく学びたい方(まずはここから)
日本語教育の理論と実践がベースになっているため、日本語教師なら一度は目を通しておきたい内容です。Amazon unlimited で読むことができます。
『外国語学習アドバイジング プロのアドバイスであなただけの学習プランをデザインする』(著:青木直子)

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2.具体的なケースを見ながら実践を学びたい方
アカデミックな要素と実用性を兼ね備えた一冊で、理論を深く理解しつつ、実践的な知識も学べる内容が詰まっています。特に、多くの実例が提示されており、具体的な場面をイメージしながら学べる点が非常に魅力的です。日本語教育に携わる研究者によって書かれているので、1と同様、日本語教師にとって有益な情報が多く含まれていると思います。

『日本語学習アドバイジング—自律性を育むための学習支援』
(著:木下直子黒田史彦トンプソン美恵子

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3.理論に基づいてしっかり学びたい方
神田外語のコースで使われるテキストです。英語版もあります。学習アドバイジングの第一人者である2人名の研究者によって書かれた本ですが、アドバイジングの入門書であると同時に、「バイブル」ともいえる存在です。世界中で読まれています。ケースでは「英語学習者」が多く扱われますが、日本語学習者にも共通する点は多くあると思います。
『リフレクティブ・ダイアローグ ―学習者オートノミーを育む言語学習アドバイジング』(著:加藤 聡子ジョー・マイナード 、 義永 美央子 (翻訳),)

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