【ブログ】外国人の起業相談で大切にしたいこと

多様な背景をもつ起業希望者たち

4月の英語ロールプレイ勉強会では、「起業相談」をテーマに2つのケースに取り組みました。1人目は、観光業での経験を活かして“よりユニークな体験”を提供したいという方。2人目は、新しいフィットネストレーニングを事業化したい方でした。(どちらも架空の相談内容です)

どちらも実績や経験を十分に持ちながら、「何から始めればいいのかわからない」という不安や迷いを抱えている状態でした。


相談対応の流れ

まず、何よりも起業相談で大切なのは、「なぜ起業したいのか」という気持ちや背景にしっかり耳を傾けることです。起業を考える方は、何らかの課題を解決したいという思いや、強い情熱を持っていることが多く、中には具体的な手続きよりも、その思いを誰かに伝えたいという方もいます。まずはその熱意を丁寧に受け止めることで、信頼関係の土台を築くことができます。

次に、「状況の整理」です。これまでに起業に向けてどんな行動をしてきたか、どこに相談したか、資金面や起業の時期はどう考えているかなど、現状を丁寧に聞き取ります。そこから、必要な支援の方向性を一緒に整理していきます。

手続きの話をはやく聞きたがるCLもいるかもしれませんが、「それはあとで専門機関を紹介しますから心配しなくていいですよ」と一言添えるだけで、相談者は安心できます。


専門機関(サポート先)の紹介

次に起業相談の「要」となるかもしれない専門機関の紹介です。セッション後のディスカッションでは、「企業の場合どこに相談すればよいか」についても意見が交わされました。就職の場合、ハローワーク、エージェント、求人サイトなどが中心になると思いますが、起業の場合はこれらとは違う相談窓口になることが多いです。以下はディスカッションの中で提示された機関の一部です。(数名が集まると集合知で思いもしなかったような情報が集まります)

外国人起業希望者に役立つ相談先

  • 市役所の外国人相談窓口(英語対応可能?)

  • 起業相談窓口・中小企業診断士(英語対応可能?)

  • スタートアップ支援団体(J-startup、大阪スタートアップポータルなど)

  • 商工会議所(例:東京商工会議所 起業支援

  • JETRO(イノベーション支援ページ

  • 司法書士・行政書士(英語対応の事務所あり)※ビザ相談には行政書士が適任

この時、英語で相談できる窓口を紹介するのが優先と思われるかもしれませんが、言語よりも、相談しやすい場所を優先させる方がいいかもしれません。それは例えば自治体や市役所の中にある無料相談窓口などかもしれません。もし日本語が話せない場合は、日本人の友人や配偶者と一緒に訪ねるのも有効です。起業に関することは日本人が日本語で聞いても一回ではわからないことも多いです。信頼できる人と一緒に話を聞き、後で確認し合うのも一つの方法です。

全国には官民連携・民間主導のスタートアップ支援機関も多く存在しています。相談窓口の利用だけでなく、ネットワークづくりにも有効ですね。*ただし、機関ごとに対象業種や支援内容が限定されている場合もあるため、事前の確認は必要です。

最近は外国人・日本人に関わらず、国を挙げて「起業」人材の創出に力を入れているようです。経済産業省スタートアップビザなど、外国から起業家を誘致する動きもありますね。日本国内の企業の窓口も今後増えていくかもしれません。https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/startupvisa/index.html

自身の経験から伝えたいこと

私自身も独立して事業を始めた経験があるため、ハードルの高さや精神面での揺れ、不安、孤独感はよく理解できます。

一方で、外国籍の方にとって、起業に関することで、日本語以外の言語での情報が少ないのは大きなハードルだと思います。手続きのこと、税金のこと、集客のこと、ほとんどが自国とは違う日本独特のシステムなのでわからないことだらけですよね。しかも、制度が複雑すぎるので、仮に日本語で書かれた書類を全て母語に訳したとしても、それでも「根本的なこと」から理解できないことがたくさんあるかもしれません。

そんなときは、すでに日本で起業している外国人を“師匠”(または”モデル”)として見つけるのも一つの方法です。業種に関係なく、その人がどんな道を歩んできたかを知ることで、多くのヒントを得られるはずです。

これは外国人だからというわけではなく、私自身も起業前に、起業の先輩である日本人(私とは違う業種の方でした)にコーチングを受けました。体系的な知識ではなかったかもしれませんが、一つ一つの不安を取り除きながらコツコツと進めていくことで、最終的にはすべてがつながりました。

もしそのような知人がいなければ、上記のスタートアップ関連のイベントやコミュニティに参加したり、SNSでつながりを探すところから始めても良いでしょう。

もしキャリアカウンセラーに起業の経験があればその共有をすることは相談者の力になるでしょう(と相談者役の方も言っていました)。また自分に経験がない場合は、友人や過去の例などを上げるのも有効です。


最後に

「起業相談」と聞くと、制度や手続きの知識提供に注目しがちですが、実際に求められているのは“気持ちへの共感と安心感”です。

段階によって相談内容も変わってきます。だからこそ、話を丁寧に聞き、進捗を確認し、必要なサポートに繋げていく。寄り添う姿勢と、無理のない情報提供こそが、起業を後押しする第一歩なのだと、今回の勉強会を通じて再認識しました。

追記:こちらの書籍は中国人向けと書いてありますが、相談先など詳細に書かれているので、全ての外国籍の方が読んでも役に立つと思います。中国語でも書かれています。